「ホームインスペクション(住宅診断)」とは?不動産売却で義務化された?!流れや費用はどれくらい?

ホームインスペクションとは

例えばあなたがリサイクルショップでコートやジーンズなどを購入するとしたら、第一印相で気に入った商品をそのままレジに持って行きますか?

ほとんどの人はその前に対象商品に穴が開いていないか、ほつれがないか、ファスナーは開け閉めが不具合なくできるかなどを手に取ってよく調べ、そして十分に納得したうえで購入されると思います。

では中古の住宅はどうでしょうか。

自分でできる範囲で目視確認はするとしても、住宅は基礎や屋根裏など目で確認することが難しいエリアが多すぎて、全てを目視するのは不可能です。

しかし不動産は大きな買い物ですから、本当に買っても良いものかどうかの判断は難しいものがあります。

そこで利用されることがあるのが「ホームインスペクション(住宅診断)」です。

この章ではホームインスペクションの利用方法や法律との絡み、問題点や注意点などについて、売り主・買い主双方の立場から考察してきます。

ホームインスペクションとは?

ホームインスペクションの概要
ホームインスペクションとは住宅診断と訳されるように、住宅に関してその状態や性能を調査し、現状での住宅性能の評価を行うものです。

ホームインスペクションを行うことで以下のようなことを知ることができます。

  • 住宅としての欠陥はないか?
  • 住宅として利用できるのはあとどれくらいか?
  • 今後予想される補修箇所や補修にかかる費用はどのくらいか?
ホームインスペクションの意義としては、専門家が第三者的な中立の立場で調査を行うことにより、現状の住宅性能について公平な診断・評価が可能になるということです。

中古住宅の買い手の立場としては、「将来にわたって安心して暮らせるように、欠陥の無い家に住みたい」、「中古であるから多少の傷みはあるにしても、その傷み度合いを知っておきたい」、「近い将来必要になる補修費の概算は把握しておきたい」といった希望があります。

売り手の立場としては「少しでも高く売れるように欠陥が無いことを証明したい」、「もしい傷みがあれば該当箇所を補修して、補修した履歴を証拠に残しておきたい」という希望があるでしょう。

また売却仲介に入る不動産業者としては「売買当事者の溝を埋めてなんとか契約をまとめて手数料を貰いたい」と思っているはずです。

売買に関係する各当事者は利害関係があり各自の思惑を持っているので、住宅の性能を客観的に公平に評価するにはこれらの者から距離を置いた第三者が入るのが適当です。

昨今、企業の不祥事が発生した時などはよく「第三者委員会」を立ち上げて真相を究明するということがなされますが、意味合いとしてはホームインスペクションもこれに近いと言えるかもしれません。

現在の住宅としての評価を専門家の目線で公平に行うのが住宅診断の意義ということになりますね。

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ホームインスペクションの調査対象

ホームインスペクションの調査内容
ホームインスペクションで調査対象になる項目は外壁等の外回りや室内の状況だけでなく、床下や屋根裏、あるいは設備等の状況も対象になります。

各項目にはさらに小項目として、例えば外壁であれば激しいひび割れや隙間の生じ具合、腐食や錆び、変色、剥がれや欠落などがないか、あるいは雨の侵入を防ぐシーリングに不具合が無いかということを調べていきます。

屋外では他にも軒裏や基礎状態を調べます。

屋根裏なども同様に建材の状態を確認していきますが、屋根裏や床下は調査者が侵入できる入口がないと調査ができません。

入り口を開けて調査をする場合には別途費用の相談が必要です。

調査方法としては目視によるものの他、機材を用いた調査を行うこともできます。

例えば床の傾きを調べるレーザー装置や雨漏りの確認に使うサーモグラフィ、シロアリ探知機などです。

器材を使う調査では費用面で割高になります。

ホームインスペクションにかかる時間や費用

費用とかかる時間
ホームインスペクションにかかる費用は画一化したルールは無く、各事業者の判断で値段設定が行われます。

何をどこまで調べるのかにもよりますが、調査員による目視を中心とした診断では約5万円程度~、調査機器や器具を用いた調査は10万円程度~が目安になります。

同じ目視調査でも、屋根裏等は点検口から顔を覗かせて行う方法と身体を侵入させて行う方法があり、後者の方が値段が高くなります。

具体的な料金は調査を頼む業者に直接問い合わせが必要です。

調査にかかる時間は30坪程度の住宅でおよそ2時間~3時間程度が目安になります。

どんな人物が調査を行うのか?

ホームインスペクションの調査する人
ホームインスペクションを行う調査員をホームインスペクターと呼びますが、実は調査員となるために必須となる資格はありません。

調査員となるための法的な制限がないので、誰でもホームインスペクションを行うことができてしまうということです。

そこで、公的な資格者としては建築士や建築施工管理技士等の有資格者が業務にあたることを国は一つの目安としています。

しかし法的な縛りではないため、ここに民間資格の参入を許す形となっています。

具体的な資格団体の紹介は避けますが、「ホームインスペクター 資格」と検索すれば、当該資格の試験や資格授与、講習会などを運営するいくつかの団体が挙がってきます。

民間資格については国内で統一されることがないため、依頼する側から見るとはホームインスペクターとしての資質が本当にあるかどうかというのは何とも言えません。

ただ全くの無資格者よりはマシであろうということは言えると思います。

上記を整理すると、実際の調査員は以下の3タイプに分類されることになります。

  1. 建築士等の公的資格の保持者
  2. 建築士等の公的資格+民間のホームインスペクター資格保持者
  3. 民間のホームインスペクター資格保持者

上記①~③の調査員が、各ホームインスペクション事業者に雇われているということになります。

知識と経験をより多く積み、また十分に訓練を受けた調査員を選ぶとしたら、上記のうちでは②か①の者を指名して調査を依頼できるところが安心です。

実際にホームインスペクションの依頼を出す場面では、調査員個人というよりも当該者を有する法人や団体が依頼窓口になります。

例えば〇〇建設会社や〇〇設計事務所、〇〇建築士事務所、〇〇不動産鑑定士事務所、あるいは普通に住宅関係の株式会社もホームインスペクションを行うことがあります。

優良業者の選定を自分で行うのは難しい面がありますが、自分で依頼する場合には少なくとも有資格者が在籍していることを確認し、相性や信頼性、コミュニケーション能力などを考慮して決めることになるでしょう。

この点、実はこれまでホームインスペクションの実施については国は積極的に関与せず、必要だと思った者が個別に業者に依頼するしかありませんでした。

日本ではまだ認知度も低く、実施が標準化されているとも言えない状況です。

それがここにきて、国が中古不動産の流通促進を狙ってホームインスペクションを中古物件の取引に絡めようと法改正を行う運びとなりました。

これは業界では大変インパクトのあるものです。

次の項からはホームインスペクションと法律面での絡みを見ていきます。

宅建業法の改正によるホームインスペクションの説明義務化

ホームインスペクションの説明義務
アメリカではすでにホームインスペクションは標準化していて、中古物件の取引のほとんどのケースで実施されています。

日本でも数年前から関係機関による啓発が行われてきましたが、まだ認知度が低く一般に普及しているとは言えません。

国は従来から中古不動産の市場流通について、より安全に、より活発に取引されることを望んでいましたが、中古不動産にはやはりリスクがついてまわることは否めません。

このリスクが中古不動産の流通の妨げになると考えた国は、ホームインスペクションによって安全性を確認することで少しでも流通の活発化につながらないかと考えたわけです。

確かに、専門家が第三者的目線で中古住宅の安全性を評価すれば、買い手は安心しますし売り手側も保有物件の状態を正しく評価するができ、見込客に対して安全性をアピールすることができます。

そこで、不動産売買に関与する仲介不動産業者を管理するための法律「宅地建物取引業法」を改正し、2018年4月から取引の一定段階でホームインスペクションに関する説明を義務化したのです。

たまに、ホームインスペクションの実施自体が義務化されたと勘違いする人がいますが、これは違います。

義務化されたのはあくまでホームインスペクションに関する説明であって、その実施まで義務化されたわけではありません。

この説明義務を負うのは不動産売買を仲介する宅建業者(仲介に入る不動産業者)で、説明すべき対象となるのは中古物件売買にかかる仲介契約(媒介契約)を結ぶ依頼者です。

つまり売却や購入の仲介を依頼してきたお客さんに対してホームインスペクションの説明をする義務が課されたということになります。

この説明義務については、説明する内容と時期が問題になります。

まず、売却や購入の仲介を依頼する時に結ぶ仲介契約(媒介契約)の締結時に、ホームインスペクションとは何かについて説明し、同時に宅建業者としてホームインスペクション業者をあっせんできるか否かについて説明が必要です。

宅建業者がホームインスペクション業者をあっせんできない場合でも、あっせんできない旨を説明しなければなりません。

あっせんできる場合はその旨を伝え、依頼者側がホームインスペクション実施を望むかどうかを確認します。

依頼者が望む場合、宅建業者は単にホームインスペクション業者を紹介するだけでは足りず、実施に向けた具体的な段取りまで調整しなければなりません。

ホームインスペクション実施後、売買契約締結前に宅建業者から購入希望者に重要事項の説明がなされますが、その際には宅建業者がホームインスペクションの結果を買い主に説明しなければなりません。

もし今回ホームインスペクションを実施しない場合でも、宅建業者は重要事項説明の際に購入希望者に対して過去のホームインスペクションの実施の有無と、実施しているのであればその結果を説明しなければなりません。

購入希望者が購入を決め売買契約に臨む際には売り主、買い主は相互に対象物件の基礎や外壁等の現状を確認し、確認した内容を宅建業者が両者に書面で交付する必要があります。

なお、購入希望者側が単独でホームインスペクションを望む場合、宅建業者はホームインスペクションの実施前にあらかじめ売り主側の承諾を得ておく必要があります。

ホームインスペクションの費用負担者はだれ?

費用の負担者は?
費用の負担については法律上で特段の規制があるわけではありません。

従って、売り手か買い手どちらかが全額負担しても良いですし、折半してもOKです。

また宅建業者が負担を幾らか背負うこともできます。

この点、実務上では売買交渉全体に絡めた交渉項目として扱われることも多くなると思います。

基本的にはホームインスペクションを望む者が負担することを原則としながらも、実際には買い手が「売り手買い手双方の折半でホームインスペクションを実施しなければ購入しない」と主張することもできます。

売り手側はこれを受けてその要求をのむ選択もできますし、これを蹴って次の購入希望者を待つこともできます。

仲介不動産業者としても、ホームインスペクション実施によって売買契約妥結の確実性が上がるのであれば、幾らか負担しても良いと判断することもあるでしょう。

場合によっては、不動産業者が全額負担することで顧客の誘因を図るといったことも可能です。

ホームインスペクションの説明義務化によって、交渉上の項目がまた一つ増えたことになります。

ホームインスペクションの問題点とは?

ホームインスペクションの問題点
今回の宅建業法改正に絡めて、ホームインスペクションが中古不動産市場に接点を持つようになったこと自体は評価することができると思います。

取り引きの安全性を高めて不動産資産の有効利用が推進されると思われますので、国内資産の流動性を高めることが期待されます。

ただひとつ、実務上で懸念されていることもいくつかあります。

まずは宅建業者とホームインスペクション業者との関係性です。

ホームインスペクション業者は宅建業者から仕事を貰う立場にあり、いわゆる下請け的存在となります。

建前上は「中立・公平な立場」でホームインスペクションを行うことがうたわれますが、宅建業者から「仕事をやるから契約がまとまりやすいように調査結果を調整しろよ」という無言の圧力や忖度が発生しないとも限りません。

また宅建業者の子会社がホームインスペクションを行うことも可能ですので、その場合は宅建業者の関与の度合いが強まる恐れもあります。

買い手側にとっては、宅建業者があっせんするホームインスペクション業者が行った調査について不信感を持つことも十分に考えられ、せっかく売り主負担で行ったとしても期待した効果が出ないといったことも起こり得ます。

また、ホームインスペクションの結果を説明するのは宅建業者であることも問題視されることがあります。

調査を実施したホームインスペクターなどではなく、宅建業者内の宅建士が説明することになるということです。

宅建士は不動産の取引等については明るいのですが、建築や建材などについてはそれほど知識があるわけではありません。

ホームインスペクション業者から受けた報告書を基に説明することになるので、依頼者から細かい質問を受けた際にどこまで正確に、具体的に答えることができるかという問題もあります。

今回の法改正によってホームインスペクションが中古不動産取引に関与すること自体は評価できますが、細かい点では色々問題が起きる可能性が残っていると言えるでしょう。

では最後に、売り手・買い手双方の立場から、ホームインスペクションのメリットとデメリットをまとめてみましょう。

売買契約当事者にとってのメリット・デメリット

売り主のメリット

  • ホームンインスペクション実施済み物件として宣伝効果を見込める
  • 必要箇所に補修を施すことで価値を下げずに売ることができる
  • 物件の瑕疵を把握することにより瑕疵担保責任の度合いを調整できる

売り主のデメリット

  • 売り主が費用を負担することが比較的多い
  • 発見された瑕疵が大きい場合、改善のための費用も大きくなる
  • 見つかった瑕疵を補修しないと物件の欠点となり売りづらくなる

買い主のメリット

  • 第三者による調査結果として購入の判断材料にすることができる
  • 住宅としてあと何年くらい持つのか知ることができる
  • 費用負担が生じることがある

買い主のデメリット

  • 宅建業者経由で実施した場合、調査結果の正確性・信憑性が問題になる可能性もある
  • 全ての欠陥や不具合が分かるわけではない
  • 劣化状況を把握できるので購入後に発生する補修について計画的に費用を用意できる

全体的に、ホームインスペクションそれ自体はどちらかというと買い手側が安心感を得るためのものであるということが言えると思います。

ただ宅建業法改正における説明義務化を含めて考える場合、売り手側主導で行われることが多くなると予想されることから、費用をかけても買い手にどこまで納得性を持たせることができるのかという疑問もでてきます。

売り手側としては、ホームインスペクションの実施費用の点で関係者間の負担をどう分配するかという思慮も必要になってくるでしょう。

まとめ

今回は不動産売買に利用されることがあるホームインスペクション(住宅診断)について見てきました。

住宅における瑕疵や不具合を専門家が調査して明らかにすることができるものですが、最近は法律改正によって宅建業者による説明が義務化されたことが大きな話題になっています。

これによってホームインスペクションの実施の判断やその費用負担について、売り手側も対応を迫られることが多くなります。

窓口となる仲介不動産業者の担当者も建築そのものには明るくないことを踏まえ、ホームインスペクションについては売り主自身も能動的に知識を蓄えておくという姿勢が必要です。

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