不動産売却で問題になる「瑕疵担保責任」とは?

瑕疵担保責任とは?

日用品などを購入する行為も法律上は売買取引ですので、少なからず契約上のリスクというものが存在します。

金額が小さければ万が一何かトラブルが起きてもそれほど大きな問題には発展しませんが、例えば自動車や家電の中でも高いものであればトラブルが起きた時に揉め事になることもあります。

不動産の取引ともなると非常に大きな金額になりますから、万が一何かトラブルが起きると法律上の責任が大きくなることは想像に難くありません。

特に中古不動産の売買では、新品でない以上なんらかの不具合が出てくる可能性もあり、これが「たんせきにん」という問題に発展することがあります。

この章では不動産の売買取引で問題になることがある「瑕疵担保責任」について解説していきます。

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瑕疵担保責任は民法で定められている

瑕疵担保責任と民法
不動産の取引は古くから行われてきましたが、特に中古物件の取引では色々とトラブルが起きることありました。

例えば購入後に雨漏りがしてきた、床下にシロアリの被害が及んでいたなど、不動産にまつわるトラブルは多くあります。

法整備が整う近代以前は、そのようなトラブルに巻き込まれた買い手側は売り手に責任を追及することはできても、一部は泣きを見ることもあったでしょう。

「そんなことは知らん!お前もこれでいいと納得して買ったんだろう?」と突っぱねられるとそれ以上は押し問答になってしまいますからね。

そうした民事上のトラブルの経験を踏まえ、解決の道筋となるルールを定めたのが「民法」です。

近代以降はトラブルが起きた時はこの民法のルールに則って処理することができるようになり、不動産の売買取引にも原則として民法が適用されます。

「瑕疵担保責任」もこの民法に規定があるのですが、これは売り主側に発生する責任であり、基本的に買い手側に有利な概念になっています。

特に不動産など大きな買い物の場合、購入後にその不動産に思わぬ傷や不具合があることが発覚すると、買い手が自費で補修するには金銭的に大きな痛手になります。

その買い手側の痛手を回復することができるルールが瑕疵担保責任というものですが、売り手にとっては責任負担を生じさせるものですので、不動産を売却する立場になる人は瑕疵担保責任について知っておかなければなりません。

これを次の項で詳しく見てみます。

瑕疵担保責任とはどういうもの?

瑕疵担保責任とはどういうもの?
瑕疵担保責任は言葉自体が難しいので、まず単語の分解をして理解しやすいようにしてみましょう。

「瑕疵」とは「キズ」や「欠陥」、あるいは「欠点」などという意味で、本来必要な性質や状態を欠くことを言います。

「担保」とは、「損害を回復させる保証」という意味です。

つまり、不動産取引の場合の瑕疵担保責任とは、取引対象である不動産に欠陥があり損害が発生した場合に、その損害を回復させるための保証責任ということになります。

ただし、建物には経年劣化が必ず起きますので、中古不動産の場合はこれを当然に踏まえて、取引当事者は契約に臨まなければいけません。

従って、瑕疵担保責任は経年劣化については対象外です。

不動産取引の過程では買い手も対象物件をチェックして、問題がないかどうかを確かめることになり、通常の経年劣化はこの時点で当事者が了承済みですから買い手も文句は言えません。

ただ、不動産の性質上、一般的なチェックでは確認が及ばないところもあります。

配管の中や屋根裏、床下の基礎などは素人では確認が難しいのは当然です。

これは売り手にとっても同様で、そこまで入念にチェックを入れるのは難しいでしょう。

当事者にとって契約当時に知ることができない、上記のような予想しがたい瑕疵を「隠れた瑕疵」といいますが、物件を引き渡した後にこの隠れた瑕疵が表面化した時が瑕疵担保責任の出番となります。

代表例には上でも登場した雨漏り、シロアリ被害、建材の腐食などがありますが、それ以外にも例えば昔の産業廃棄物が地中に埋められていたなどの場合も瑕疵担保責任の問題になることがあります。

売り手としては予想外の「瑕疵」となるので事後的にこうした責任を追及されると大きな痛手になりますし、取引の安全ということを考えると不動産を売ることに対して怖さを感じてしまうかもしれません。

この点を、まずは原則の民法に照らして見てみます。

瑕疵担保責任の原則論

民法上のルールでは、売り主の瑕疵担保責任について、買い主はその瑕疵を発見してから1年以内であれば責任を追及することが可能になっています。

瑕疵を買い主が“発見”してから1年間権利行使が可能なわけですから、売り主としては取引後、長期間法的リスクに怯えていなければならないことになります。

瑕疵の回復の為には、売り主が費用を支弁して雨漏りを補修するなどして瑕疵を回復したり、金銭で損害賠償金を支払うなどの方法があります。

もし瑕疵が大きく不動産としての利用ができないような場合は契約の解除ということもありえます。

売り主は非常に大きなリスクを背負うことになりますが、実際の契約では上記のルールをそのまま契約に盛り込むことは通常ありません。

上記のルールは契約によって修正できるのです。

契約の中に瑕疵担保責任の条項を必ず盛り込むこと!

瑕疵担保責任の条項
まず注意しなければならないのは、もし契約上で瑕疵担保責任について何の取決めもしない場合、それは瑕疵担保責任が発生しなくなるわけではない、ということです。

取決めをしない場合は前項で述べた民法上の原則的な瑕疵担保責任が自動的に発生してしまうことになります。

しかし、原則的なルールを契約上で変更することが可能となっていますから、ぜひ売り手に有利な内容に修正して契約に盛り込むようにしましょう。

我が国の契約ルールには「契約自由の原則」というものがあり、これは一部の強行規定以外の契約内容は当事者同士で自由に決められるというものです。

瑕疵担保責任も契約当事者で自由に決めることができるので、売り手側としては前述した多大なリスクを軽減するためにできるだけ有利な内容にするべきです。

有利な条項にするには以下のような条件交渉のもっていき方が考えられます。

①瑕疵担保責任を免除する

自由交渉ですから、瑕疵担保責任を発生させないことも可能です。

例えば「売り主は瑕疵担保責任を負わない」とする旨の条項を盛り込めば、売り主は瑕疵担保責任のリスクから解放されることになります。

②責任の範囲を限定する

「瑕疵」にはその不動産にまつわるあらゆるものを含みますから、どんな瑕疵が発見されるのか分かりません。

その分売り手側はリスクが増大しますから、その責任の範囲を限定することでリスクを低減できます。

例えば、「瑕疵担保責任については雨漏りに限定し、それ以外は責任を負わない」などとすることも可能です。

③瑕疵担保責任の期間を限定する

民法上の原則の瑕疵担保責任は買い主が瑕疵を発見してから1年間責任追及が可能ですので、この点が売り手側に非常に不利になります。

この責任を負う期間も契約で修正することが可能です。

例えば「瑕疵担保責任については引き渡し後3か月間とする」などとして期間を限定します。

実際の契約では多くの場合瑕疵担保責任の期間を3か月程度としていますが、これは当事者双方のリスクのバランスを考えてのことです。

売り手側としては、3か月以内に出てくるような瑕疵ならこちらにも多少の責任はあるから納得できる範囲と考えられますし、買い手側としても3か月も住んでいれば瑕疵があれば見つけることができるだろう、と考えることができます。

ただ必ず3か月としなければならないわけではありません。

後述しますがこの点を交渉材料にして責任期間を1か月にしたり、逆に半年など伸長することもできます。

瑕疵担保責任は交渉材料にできる

瑕疵担保責任は交渉材料にできる
前項では瑕疵担保責任について、契約上で民法の原則を修正しながら責任の範囲や期間を取り決めることができるとお話しましたが、この点を契約全体を見ての交渉材料にすることもできます。

契約全体では、瑕疵担保責任以外にも売買金額や代金の支払日、引渡しの時期、税金関係の清算方法、家屋を解体する場合はその撤去費用の負担など多くの項目が交渉材料になります。

売り手と買い手の交渉上のパワーバランスに左右される面もありますが、例えば売り手側が瑕疵担保責任を免除することを希望する場合は、売却価格を大きく値引きして相手の納得を引き出す交渉も可能です。

買い手が納得しなければ、値引きの範囲を小さくして瑕疵担保責任の範囲を1か月に限定する、それでも納得しなければさらに値引き額を小さくして3か月にするなど、売買代金と絡めた交渉で瑕疵担保責任の度合いを狭めるように交渉することができます。

このように、瑕疵担保責任についてはまず必ず条項に盛り込むこと、そして責任の範囲と期間をどうするか考えることが重要になります。

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売り主が知っていた瑕疵については対象外

瑕疵担保責任は通常売り主も知ることが難しいような瑕疵について取り扱うものですので、売り主が知っていた瑕疵については瑕疵担保責任の問題にはなりません。

まず、売り主が知っていた瑕疵を事前に買い手に伝えていた場合、これは当事者がどちらも知ることになりますから、納得ずくの契約ということで問題はありません。

しかし売り主が知っていながら相手に伝えなかった瑕疵については、瑕疵担保責任とは別の問題として買い主は売り主に責任の追及が可能です。

ですから、たとえ契約上で瑕疵担保責任を負わないとしていたり、あるいは責任の期間や範囲が限定されていたとしても、全く別問題として売り手の責任を追及することができます。

瑕疵の補修や損害賠償、あるいは契約解除などの問題に発展することになるので、売り主が知っている瑕疵については買い手に事前に伝えておく必要があります。

瑕疵には物件そのものだけでなく、事情によっては近隣住民とのトラブルの経緯なども含まれてくるので、買い手側にどこまで伝えるべきかは売り手として悩むところもあるでしょう。

ここら辺は一人で悩まずに、仲介に入った不動産業者に相談するのがベストです。

伝えておくべき瑕疵の種類や強度についてアドバイスを貰えますから、これに従ってください。

▼不動産の売却をスムーズに行うためのおすすめ記事です。
不動産売却の手順と流れ 不動産売却の手続きと流れ 不動産売却をスムーズに行おう!

現状有姿引渡しと瑕疵担保責任の関係

不動産の取引では「現状有姿引渡し」あるいは「現状有姿取引」である旨を契約に盛り込むことがあります。

現状有姿引渡しや現状有姿取引というのは、その物件をそのままの状態で買い手に引き渡すという意味です。

これを考えると、現状有姿取引では買い手側も全ての事情に納得した取引であると捉えることも可能なように思えます。

瑕疵があることも含めて現状有姿で引き渡すことに同意しているようにも見えるからです。

しかし実際には、現状有姿取引だからといって必ずしも瑕疵担保責任を負わなくて済むわけではありません。

たまに、現状有姿取引では売り主は瑕疵担保責任は負わなくて良いという記述を見かけますが、これは危険です。

現状有姿引渡しはあくまで、売り主が買い主にそのままの現状で物件を引き渡すという責任(債務)についての話であって、瑕疵担保責任とは別の債務の話であると解釈されるからです。

従って、現状有姿引渡し条項があったとしても、瑕疵担保責任についての取決めは必ず別途入れておく必要があります。

売り主が不動産業者の場合は瑕疵担保責任の度合いが変わる

もし売り手側が宅建業者である不動産業者の場合、個人の売り主よりも責任の度合いが強まります。

プロとして、お客に瑕疵の無い物件を引き渡す責任が強まるからです。

買い手側もプロの業者である場合は別ですが、売り手側が業者で買い手が個人の場合には瑕疵担保責任を免除することはできず、2年以上の期間を定めて瑕疵担保責任を負わなければなりません。

プロの業者は長期間安心して住めるような物件を引き渡す責任があるので、ある程度専門的な検査等も経てから引き渡すことになるでしょう。

ホームインスペクションの利用も検討できる

個人の売り主は瑕疵担保責任が発生しないように専門的な検査を事前に受けることも検討できます。

ホームインスペクションといって専門の検査機関が細部まで検査を行い、隠れた瑕疵がないかどうかチェックしていきます。

当然費用が発生しますが、事前に売り主負担で行うことで買い手候補に安心感を持たせることができ、早期の高額売却が可能になります。

もしくは交渉段階でホームインスペクションを持ち出して、費用負担を折半にするなどの交渉も可能です。

▼ホームインスペクションについて詳しく書いている記事です。
ホームインスペクションとは 「ホームインスペクション(住宅診断)」とは?不動産売却で義務化された?!流れや費用はどれくらい?

不動産業者の保証サービスや瑕疵担保責任用の保険もある

仲介する不動産業者によっては、付帯サービスとして売り主に瑕疵担保責任が発生した場合にいくらかの金銭を交付する保証サービスを提供する業者もあります。

また、これとは別に瑕疵担保責任の発生に備えて入ることができる保険商品も存在します。

自動車保険等の損害保険のようなイメージですが、住宅瑕疵担保責任保険協会というところで扱う保険商品です。

▼詳しくはこちらで確認できます。
参考 既存住宅売買のかし保険(個人間売買タイプ)住宅瑕疵担保責任保険協会 瑕疵担保責任のリスクをできるだけ低減したいならば、こうしたサービスを利用する手もありますね。

瑕疵担保責任についてのまとめ

今回は不動産の売買取引で問題になることがある「瑕疵担保責任」について見てきました。

この責任は売り主に発生するもので、売却する物件に隠れた瑕疵があった場合に事後的に補償等に応じなければならない責任となります。

原則のルールでいくと買い手側が瑕疵を発見した時点から1年間責任を追及されることになるので、このままでは売り手の負担は大変大きなものになります。

契約上でこの原則を修正することでリスクを低減できますから、必ず契約条項に盛り込んで責任の範囲や期間を限定するようにしてください。

瑕疵担保責任に関して契約条項を設けないと、原則のルールがそのまま適用になってしまうのでその点は注意してくださいね。

▼不動産売却時に起こりやすいトラブルと解決法をまとめています。
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