不動産の売却はとても大きな金額のお金が絡むので、何かトラブルが生じた場合は金銭的なダメージも大きくなります。
また自分以外の複数の関係者が絡むことも多く、利害関係が複雑になることもあります。
法律や税金などが絡んでくるケースもあり、内在するリスクは大きいと考えて良いでしょう。
本章では不動産関係で相談できる相談窓口を複数紹介し、それぞれどのようなシーンで活用できるのか見ていきます。不動産売却の流れを理解しましょう!
この記事でわかること
売却自体の相談なら個別の不動産業者
不動産の売却ですから、最も多用する窓口は不動産業者になるでしょう。
問題は、不動産業者はそれぞれ得意とする守備範囲が異なるので、個別具体的な相談の種類に応じて、その分野が得意な不動産業者を探してコンタクトを取る必要があるということです。
一応、業者側もお金になる案件であれば不得意分野でも話を聞いてくれると思いますが、損をするのは相談者側です。
例えば戸建ての物件を売りたいとき、普段はマンションしか扱わない不動産業者に相談すると、なかなか買い手が付かなかったり、売却価格が下がってしまうことがあります。
同じ理由で、不動産の売却仲介を主業としないところに話を持ち込んでしまうと、相談者側の不利益はもっと大きくなってしまう危険があります。
少なくとも、以下に挙げるケース別に、その事案を得意とする不動産業者を相談相手とするように心がけましょう。
- 市場で買い手を探し、できるだけ高く売りたい場合は・・売買仲介が得意な業者
- 売却と賃貸どちらにするべきか相談したい場合は・・賃貸管理に対応できる業者
- 理由があってできるだけ早く売りたい場合・・直接買取が得意な業者
- 売却した後もその物件を利用したい場合は・・リースバックに対応する業者
- 自宅などが競売にかけられそうな場合は・・任意売却に対応できる業者
上記④のリースバックは、売却して不動産の所有権を手放したうえで、以後は買い取った不動産業者に賃料を払って借り受ける方法です。
例えば事業資金などまとまった資金を用立てるために自宅を売却しなければならないが、そのまま自宅に住み続けたいなどという場合に検討します。
⑤の任意売却は特殊なもので、住宅ローンの支払いが難しくなり売却を考えたが、売却価格がローン残高に満たないため(オーバーローン状態)売却ができず、そのままでは競売に進んでしまいそうな時に検討するものです。
どのような場合でも、不動産業者に一社ずつコンタクトを取るのは非効率なので、一括査定サイトを利用するのが効率的です。
査定依頼の際に個別の相談内容を記載しておけば、対応可能な業者が手を挙げてコンタクトを取ってきてくれます。
不動産業者とのトラブルは各都道府県の宅建協会

不動産業者とのトラブルは各都道府県の宅建協会
不動産取引全般の相談が可能ですが、個別の不動産業者との間に生じたトラブルや苦情の相談も対象になります。
各都道府県の協会によって相談時間が異なるので、事前に電話で問い合わせて時間を調整しましょう。
悪質な不動産業者とのトラブルは都道府県の不動産担当部門
個別の不動産業者に悪質性があるなどの場合、業界の自主管理団体の性質をもつ宅建業協会では対応が難しいこともあります。
その場合は公的な窓口に相談する必要が出てくるでしょう。
各県には不動産分野を管轄する部門がありますから、問題が大きい場合は一度相談してみても良いでしょう。
都道府県によって部門の名称が異なりますが、例えば「〇〇県建設指導部」「〇〇県住宅政策課」「〇〇県土木建築課」などの名称を有します。
不動産絡みでは国の機関として国土交通省の地方整備局などもありますが、相当大規模な宅地造成や土地開発などが絡む大型事案でトラブルとなった場合、こちらの出番もあるかもしれません。
▼都道府県別の窓口はこちら
参考 建設産業・不動産業:都道府県に関する窓口国土交通省
法律が絡む問題は弁護士
個人的な問題が絡む事案で頼りになるのが弁護士です。
離婚に絡む財産分与で自宅不動産をどのように扱うべきか、借金の返済に追われているが債務整理をして自宅を守りたい、相続した不動産の分割方法で相続人同士揉めているなど、込み入った利害関係や法律問題が絡むケースでは弁護士の助けが必要になることも多いです。
弁護士は公的な機関と違い、相談者個人の利益を追求してくれるので困った時にはとても頼りになる存在です。
費用面がネックになり、事務所によっては相談だけであれば無料で受けてくれるところもありますが、基本的には相談も有料で30分5千円程度の相談料がかかると考えておきましょう。
また相談後に個別具体的なトラブルを解決するために事件を受任してもらうには、別途費用が掛かります。
▼全国の弁護士会一覧
参考 全国の弁護士会・弁護士会連合会日本弁護士連合会
簡単な法律相談や登記の相談なら司法書士
弁護士と同様に他者との利害関係が絡む事案や法律問題が絡むケースで相談できますが、お金に関して具体的なトラブルが生じている場合、その額が140万円未満のケースでないと、弁護士との業際問題の関係でしっかりとした法律面のサポートを受けられない可能性があります。
費用面では弁護士よりも安くなるのが普通ですが、安心面を考えると弁護士に分があります。
一方、司法書士は登記分野が得意ですので、不動産売却に絡む登記方面の相談は司法書士が頼りになります。
具体的な手続きを丸投げして代行してもらうこともできるので、面倒を避けたい場合はお任せできます。
参考 日本司法書士会連合会日本司法書士会連合会登記に関する無料相談は法務局
不動産登記に絡む相談を無料でしたい場合は、司法書士よりも法務局が適当であることも多いです。
他者との利害関係や個人的な問題で法律が絡んでいるようなケース以外であれば、基本的な登記に関する相談は法務局に問い合わせた方が安上がりになるでしょう。
参考 法務局・地方法務局所在地一覧法務省無料の法律相談は法テラス
弁護士や司法書士は相談料がかかるのが一般的ですが、法律や利害関係などが絡む事案でどうしても無料で相談したいという場合は法テラスに相談する手もあります。
ただし、法テラス自体は個別具体的な事案について責任をもって最後まで面倒を見てくれることはありません。
事案ごとに「一般的にはこう考えることができます」という風に、生じている問題への対処法として手掛かりになるヒントや助言をくれることはありますが、弁護士などのように事件解決を代行してくれることはありません。
個別事案への対処が必要な場合、法テラスが弁護士などを紹介してくれますが、こちらはやはり弁護士報酬などの費用が発生します。
とはいえ、無料で助言やヒントをもらえる可能性があるので、例えば不動産売却で成年後見制度の利用が必要になりそうだとか、債務整理をして不動産の抵当を解除したい、離婚絡みで配偶者と自宅の扱いで衝突している、などのケースで一度話を聞いてみることも一考です。
参考 全国の法テラス法律事務所法テラス税に関する悩みは税理士
税金や確定申告に関する問題で、最後まで丁寧な対応を求めるならば税理士が適任です。
不動産売却に絡む不動産譲渡所得税だけでなく、例えば相続に絡む事案で相続税の相談もしたい場合など、込み入った事案でも丁寧な対応を受けられます。
税理士も弁護士と同じく、基本的には相談するだけで相談料がいくらかかかりますし、確定申告の手続きを代行してもらう場合は別途の費用がかかります。
税理士への相談で注意すべき点として、相続が絡む問題では相続事案に明るい税理士に相談するようにしてください。
相続税分野は不動産の譲渡所得税よりも複雑な税分野で、同じ税理士でも相続税方面の知識やノウハウ、経験がないと相談者に不利になる可能性があります。
純粋な不動産売却に絡む税金の相談だけであれば大体どの税理士でも同じレベルの対応が受けられると思いますが、相続分野に関してだけは配慮が必要です。
参考 全国の税理士会、関連団体日本税理士会連合会無料の税金相談は国税庁の一般相談ダイヤル
不動産売却絡みの税金に関して相談を無料でしたいなら、国税庁の一般相談ダイヤルも使えます。
税に関する相談を無料ですることができるものですが、税理士のように確定申告を代行してもらうなどはできません。
全国各地には国税庁の出先機関として税務署が配置されていますが、各税務署には代表の電話番号が用意されています。
その番号にかけると機械音声でナビゲーションが行われ、相談内容に応じて指示されるダイヤルをおすことで適当な相談窓口につないでくれます。
税に関する一般的な相談ができるダイヤルは、各地の税務署の代表にかけた後、音声に従い「1」を押すとコンタクトできます。
参考 税についての相談窓口国税庁測量や境界画定の問題なら土地家屋調査士
測量が必要な事案では土地家屋調査士の出番です。
不動産を売る際には隣地の所有者と境界画定で合意を取る必要があり、詳細な測量を行う必要があります。
境界確定作業が済んでいないと後々トラブルになる恐れがあるので、リスクを嫌い買い手が付かないことも多いです。
また相続に絡む事案などでは、共有状態にある土地を分筆して売らなければならないようなこともあります。
分筆とは、一つの土地をいくつかの土地に分割するものです。
それぞれの土地に単独の所有者を設定することができるので、例えば共有状態の土地の売却について、共有者全員の合意が取れない時などに分筆を行うことを検討します。
分筆後はそれぞれの所有者が単独の行為として土地を売ることができるようになります。
参考 全国の土地家屋調査士会日本土地家屋調査士会連合会正確な不動産の価値判断が必要なら不動産鑑定士
不動産について詳細な価値の判定が求められる事案では、不動産鑑定士の出番になります。
不動産の査定は一般の不動産業者でも行えますが、これはあくまで市場で売れそうな大体の価格を算定するもので、不動産鑑定士が行う鑑定とは異なります。
不動産鑑定士が行うのはもっと学術的な不動産評価です。
例えば相続における財産分割で、不動産の価値に関して相続人間で争いがある場合や、裁判などで不動産の正確な価値を証明しなければならないような場合に、不動産鑑定士の鑑定が求められます。詳しくはこちらで説明しています⇒『不動産鑑定とは何か?無料査定との違いと使い分けについて』
街の不動産業者は儲けを追及する以上、完全に中立的な判断は期待できませんが、不動産鑑定士は中立の立場で学術的な不動産の価値を算定するので、不動産の価値判断で利害関係のある相手がいる場合や、税金問題で税務当局との見解に相違がある場合などに相談、利用することができます。
ただし不動産の鑑定には数十万円程度~の費用がかかります。
参考 日本不動産鑑定士協会連合会日本不動産鑑定士協会連合会住宅ローンやつなぎ融資なら金融機関
住宅ローン付の物件売却や、住み替えなどでつなぎ融資が必要になるなどの場合は、金融機関への相談が欠かせません。
住宅ローンが残る自宅の売却では、売却価格で残ローンを精算できるアンダーローンであっても、残債の精算手続きの際には金融機関との連携が必要になります。
売却代金で残債を賄えないオーバーローンの場合は基本的に売却することができませんが、そのまま住宅ローンを滞納して競売に進むと、金融機関が得られる回収金が少なくなることもあり、相談次第で任意売却を検討できることもあります。
任意売却については特殊な売却手法であり、経験が豊富な不動産業者との綿密な連携がまず必要になります。⇒『任意売却とは?住宅ローンを完済できなくても不動産の売却ができる!?』
その上で、当該不動産業者と一緒に金融機関に出向き、担当者を説得することになります。
また住み替え事案で、新居の購入にかかる代金の支払いタイミングが、旧マイホームの売却にかかる代金の受領よりも先に来てしまい、資金不足が生じた場面ではつなぎ融資の相談が必要です。
こうした相談は各金融機関が窓口になります。
参考 全ての取扱金融機関一覧財務省手軽な無料相談なら市区町村のよろず相談窓口も
お住まいの市区町村で設置されていればの話ですが、よろず相談などの窓口が設けられていることもあります。
例えば弁護士や司法書士、税理士、行政書士などの有資格者が順番で窓口に立ち、相談事を受け付けてくれる体制が敷かれていることも多いので、一度確認してみましょう。
多くの場合事前予約制で、打ち合わせた日時に役所に出向いて30分ほどの無料相談を受けられます。
ただしこちらは、自治体による住民サービスの側面もあるものの、実は各資格者の仕事の受注につなげる狙いもあるものです。
初回の相談は基本的なアドバイスに止まり、必要に応じて個別の事件受任につなげると、資格者側は報酬を得ることも可能です。
身近な役所が関わることで安心感はあると思いますので、ちょっとしたアドバイスや助言が欲しいなどのケースでは検討しても良いでしょう。
参考 支援拠点一覧よろず支援拠点全国本部まとめ
本章では不動産売却に関係する悩みを相談できる窓口について、いくつかご紹介してきました。
不動産分野の悩みやトラブルは非常に多岐にわたるので、ワンストップですべての悩みに対応することは難しいのが実情です。
ですからケースに応じて、悩みやトラブルの種類に対応できる相談窓口を自分で選択する必要があります。
的外れな相談窓口を選んでしまわないよう、本記事で紹介した内容をぜひ参考にしてください。