家電など物品を購入するという時は、あなたも色々と店舗やネットである程度の「相場」を調べることが多いと思います。
逆に使わなくなった物品を売ろうとする時、売り値の相場というのは非常に掴みづらくなります。
日用品であればリサイクルショップに持ち込めば大体の値段が分かるでしょうが、一般人が自分一人で売り値相場を判断するのは難しいでしょう。
売却対象が不動産の場合、築年数や間取り、土地の面積などの諸条件も物件ごとに異なるうえに、その物件固有の特性も絡むため正確な売り値相場の把握はかなり困難といえます。
それでも、業者に相談する前にある程度の相場を押さえておくことで、業者が出す査定額の信頼性の判断を容易にすることもできます。
⇒不動産業者の査定方法について
この章では不動産売却の流れを理解して、自分で不動産の売り値相場を調べる方法を見ていきましょう。
この記事でわかること
方法1:固定資産税評価額から予想する
本来、不動産の売り値相場を掴むにはできるだけ多くの不動産業者に査定をお願いして、信頼性のある査定額を平均化していくのが最も確実な方法です。
しかし査定依頼を出すと少なからず業者からの営業をかけられますから、今現在はまだ売ることが決定していないような場合はちょっと尻込みしてしまうこともあります。
プロの業者に頼らない場合はどうしても精度は落ちてしまいますが、大ざっぱな予想値として対象不動産の固定資産税評価額を利用する手があります。
固定資産税評価額というのは、固定資産税を徴収するために対象不動産の価値を地元の自治体が評価し、設定するものですが、高く評価してしまうと税金も高くなり市民の税負担も上がってしまいます。
そのため概ね時価相場の7割程度の評価額に抑えるように配慮がなされます。
従って、逆に固定資産税評価額を70%で割り戻せば、おおよその時価相場を割り出せることになります。
ただしごく大雑把な参考値程度の扱いになることは承知しておいてください。
固定資産税評価額は役所から毎年送られてくる納税通知書に記載されていますから、不動産の所有者であればすぐに確認できます。
もし手元に無ければ、不動産を管轄する役所で固定資産課税台帳を閲覧することで確認することもできますし、固定資産評価証明書を発行してもらえばその中に評価額の記載があるので確認することができます。
ここで、後に言及する内容を理解しやすくするために「一物五価」について触れておきます。
この概念は評価する者、その目的によって同じ一つの不動産でも価値が変わるということですが、「五価」は次のような評価を指します。
①時価
いわゆる実勢価格であり、一般市場での取引価格を指します。
今回はこの時価を何とか自分で予想することが目的になります。
②公示価格
一般の土地取引の他、公共事業用の土地取得の際に目安にする公的な指標で、国土交通省が所管します。
③基準地価格
公示価格を補完する役割を持ち、都道府県が管轄します。
④路線価
相続税の計算の際に相続税評価額を算出するための評価法で、国税庁が管理するものです。
⑤固定資産税評価額
上述したように地元の市区町村が管理するもので、固定資産税の他登録免許税、不動産取得税の算出に利用する価値評価法です。
上記①~⑤についてはこの後も登場するので覚えておいてください。
方法2:対象物件の近隣エリアで同様の物件をチェックする
不動産の価格は土地であれば広さ、家屋であれば広さの他にも間取りや築年数が当然影響しますが、その不動産が存する地域というのも値段に大きく関係します。
そこで、対象不動産があるエリアの周辺で、なるべく条件が近い同じような物件を調査して、どれくらいの値段で売りに出されているかをチェックすることである程度の相場を掴むことができます。
不動産は完全に同じ物件というものはありませんが、築年数や広さなど諸条件をみて、できるだけ似たような物件を探して値段をチェックしてみましょう。
方法3:土地総合情報システムを利用する
国土交通省 土地総合情報システム Land General Information System
URL:http://www.land.mlit.go.jp/webland/servlet/MainServlet
国土交通省が所管する「土地総合情報システム」では、これまでの土地と家屋の不動産取引について不動産業者からアンケートを取り、その結果を収集して実取引の価格を公表しています。
地域別に絞り込んでいくことができるので、あなたが保有する物件があるエリアでの取引事例を参考にすることができます。
実取引ですから生の情報として利用価値を生みますが、反面、個々の取引では取引当事者の個別の事情が関係してくるため、不動産の純粋な価値判断としては参考にしにくい事例も存在することに留意が必要です。
例えば売り手側に売り急ぎなどの事情があれば相場よりも安く売っているかもしれませんし、住み換えなどで買い手側に買い急ぎ事情があれば少し高めで買われた可能性もあります。
また実取引の情報ですから、地域によっては取り引き数が少ない、あるは無いということもあります。
業者側がアンケートに応じた情報しか載らないので実際の取り引き数よりも少ないのは仕方がありませんが、それでも、実取引の生の情報を知ることができるのは利点ですからチェックしてみてください。
方法4:レインズマーケットインフォメーションを利用する
不動産取引情報提供サイト REINS Market Information
URL:http://www.contract.reins.or.jp/search/displayAreaConditionBLogic.do
不動産流通機構が運営するレインズマーケットインフォメーションではマンションと戸建てについて、過去の実取引の情報を確認することができます。
最寄駅や専有面積、間取り、築年数などから詳細な絞り込みができるので、あなたの不動産に近い物件の情報を絞り込むのに役立ちます。
不動産流通機構は国土交通大臣が指定する準公的な機関で、個別の不動産業者とは異なります。
提供する情報も準公的な指標と考えることができます。
方法5:公示価格と基準地価格を調べてみる
標準地・基準地検索システム~国土交通省地価公示・都道府県地価調査~
URL:http://www.land.mlit.go.jp/landPrice/AriaServlet?MOD=2&TYP=0
国土交通省が所管するこちらのサイトでは、公示価格と基準値価格が両方チェックできるようになっています。
最初の項で説明した②公示価格と③基準地価格は土地の値段に関しては一般の土地取引の際の指標ともなるものです。
実勢価格に近い指標として利用することができるので、土地に関してはそのまま参考値として見ることができます。
方法6:その他取引価格の公表サイトを利用する
公的な機関ではありませんが、不動産関連会社のいくつかは、自社や関係先の不動産業者の取引情報を集めてデータベース化しているところもあります。
うまく似たような物件で同一エリアにある取引事例があれば参考にすることができます。
民間のサイトでは土地、戸建て、マンションに対応したホームズが有名です。
【LIFULL HOME’S】
URL:https://www.homes.co.jp/mansion/chuko/price/
またマンションに特化したマンションマーケットなどもあります。
【マンションマーケット】
URL:https://mansion-market.com/
方法7:路線価から調べる
少し難しいので素人の方にはあまりお勧めできませんが、上述した五価の一つ④路線価から時価を予想することもできます。
調べ方の仕組みとしては固定資産税評価額を利用したものと同じです。
固定資産税評価額は時価の7割程度となるように設定されますが、路線価は時価の8割程度になるように設定されます。
そのため、80%で割り戻すことでおおよその時価の予想ができることになります。
ただ路線価の扱い自体が少し難しいので、手間数と慣れを要します。
基本的には、国税庁が公表している路線価を調べ、1㎡あたり千円単位の土地価格を確認します。
路線価図は税務署で冊子状のもので確認できますが、ネット上でも見ることができます。
【財産評価基準書|国税庁】
URL:http://www.rosenka.nta.go.jp/
1㎡あたりの単価に地積をかけるとその土地の基本の価値が分かるのですが、正確な相続税評価額の算出の為にはそこから補正として難しい調整が入るため、素人の方ではそこまではできません。
調整前の基本的な土地価格を参考にする程度となるのでその点は理解が必要です。
また路線価は比較的人口の多いエリアしか設定されておらず、郊外や地方では路線価がないところもあるので、その場合は利用することができません。
参考値としての利用のしやすさや精度を考えると強くお勧めはできませんが、このような方法もあるということは覚えていても良いでしょう。
まとめ
今回は自分で売却する不動産の相場を調べる方法について見てきました。
不動産の相場はプロでも見極めが難しいので、自分で調べる場合は正確性の点でどうしても精度が落ちることは承知しておく必要があります。
その上で、固定資産税評価額を参考にして割戻計算をしたり、他の参考価値を利用して時価相場を予想したりといったことは可能ですから試してみてもよいと思います。
近隣の不動産業者をチェックして同一エリアの似たような物件を調査するのも有効ですし、ネット上では一定数の取引事例を見ることもできるので、条件が似た物件を調べて参考にすることもできます。
正確性や手間等を考えると不動産業者に正式に査定依頼を出すのが良いのは当然として、事前調査として自分で調べてみるのも面白いのでぜひ試してみてください。